【読書感想】歌川国芳猫づくし(風野真知雄)

 

歌川国芳猫づくし

歌川国芳猫づくし

 

お上を恐れぬ威勢の良さで知られる国芳も、老いの戸惑いから、死への興味と、そして最後の恋への憧れが泡のように、ぽつぽつと浮かぶ。そんななか、八匹の猫と、一癖も二癖もある弟子たちに囲まれた彼の周囲では、次々と「猫」にまつわる大事小事が起きてー。数々の人気時代小説で知られる著者が、持ち味の諧謔と哀感に溢れた筆致で、猫のいる日常と、淡い恋心を豊かに描きだします。

 

 

 大阪出身の父母を持ち、大阪で生まれ育ったわたしにとって、江戸文化は馴染みが薄い。江戸文化を創ったその人、「徳川家康」は憎き人物であり、「豊臣秀吉」こそ初めて天下を統一した尊敬すべき人物、という認識がある。これは、読売ジャイアンツくたばりやがれ、阪神タイガースこそ優勝にふさわしいんじゃボケ、という、DNAレベルに書き込まれている精神に通ずる。

 

 歌川国芳というのは、実在する今から150年ほど前に江戸で活躍した浮世絵師である。前述のとおり江戸文化に対する興味がなく、日本史の勉強も怠っていたわたしにとって、初耳の名前だ。

 当時、天保の改革による質素倹約、風紀粛正の号令で、役者絵や美人画が禁止になるなど、浮世絵師も大打撃を受けた。そんな中、彼は理不尽な弾圧に対する皮肉を、ひたすら絵にしたという(Wikipedia先生によると)。

 ふむ。なかなか興味深い人物だ。国家権力に対し、ユーモアを交えて楯突くような姿勢は嫌いじゃない。

 さらに、彼に対する好感がさらに増した情報はこれだ。

歌川国芳、猫めっちゃ好きやねん」

 握手。

 そんな時代に猫をきちんと埋葬する姿なんかは、尊敬の念すら覚える。江戸に国芳がいてよかった。絵にもよく猫を登場させるなど、相当な愛猫家であったことは周知の事実だったそう。

 「鼠よけの猫」なんかは見たことある気がする。

bakumatsu.org

 本書には、老いさらばえて死を意識し始めた国芳の、恐怖・葛藤が描かれている。まだまだ西洋医学が隆盛していない時代の話である。病や死は、科学的なものではなかったに違いない。

 だからこそ、日本古来の怪談ってあんなに怖いのかもしれない。

 

 時代物が苦手な人もサクサク読めます。

 

 

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