【読書感想】ブランケット・キャッツ(重松清)

 

ブランケット・キャッツ (朝日文庫)

ブランケット・キャッツ (朝日文庫)

 

馴染んだ毛布とともに、2泊3日でレンタルされる「ブランケット・キャット」。父親がリストラされた家族、子どものできない夫婦、いじめに直面した息子と両親、25歳のフリーター派遣社員の彼女ーー。「明日」が揺らいだ人たちに、猫が贈った温もりと小さな7つの光。

 

・契約期間は三日間
・買い取り不可
・原則的に一カ月以上の間を空けないとレンタルできない
・寝るときは必ずバスケットに入れて、毛布を敷いてあげること
・借主の好きな名前をつけていい
・猫の粗相による損害はいっさい補償されない

 

 これらはブランケット・キャットのレンタルに関するルールだ。家に居つくと言われる猫が、様々な家を渡り歩くなんてことが可能なのか、そのストレスは如何許りか、傾げた首が戻らない。少なくとも、うちの猫たちにその適性がないことは確かである。

 が、この本の中の猫たち(ブランケット・キャッツ)は賢い。「生きていればいろいろある」酒に酔った人がよく吐くセリフだけど、その「いろいろ」に含まれている全部をまるっと分かっているかのように、借主に寄り添う。

 当然ながら、3日間猫と暮らしてみたところで、悩みの解決にも哀しみの癒しにもならない。嫌な人が嫌じゃなくなるわけでも、子どもができるわけでも、仕事が見つかるわけでも、はたまた幸せになれるわけでもない。

 でも、小さな「異物」が家に入り込むことで、心に小さな化学反応が起こる。

猫は大切なものを失ったら、困ることしかできないけど、人間は違うの。大切なものがなくなっても、それを思い出にして、また新しい大切なものを見つけることができるし、勝手に見つけちゃうものなのよ、人間は。

 下手な慰めや励ましの言葉は、人を余計落ち込ませることがある。「にゃあ」と鳴くだけの猫のほうが、人に一筋の光をあたえてくれるのかもしれない。

 

 

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