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【読書感想】猫別れ(猪本典子)

 

猫別れ

猫別れ

 

パリ在住時代、ひょんなことから別れた男の猫と暮らすようになった私。共に生き、死を看取るまでの年月を鮮やかに綴る。 

 

 小説かと思って読み終わったら、裏表紙の著者のプロフィールを見てエッセイだったことに気付く。最初からエッセイと認識した上で読みきれただろうか。フィクションであったならどれだけよかったか、と思う。

 タイトルからも相当な辛さを覚悟して挑んだが、やっぱりどうしても目の前にいる我が家の猫たちと重ね合わせてしまい、涙腺爆発。

 まだまだ1歳に満たないのにね。

 

 最初の猫はブブ。パリに住む男と女と一緒に暮らす。しかし、ふたりの関係は良好とは言えない。お互い別れるのは吝かではないが、ブブのことを思うと、ためらいがある。

ずっとそばにいると、コミュニケーションが増す。ブブに対するかわいさが、日に日に倍増する。毛づくろいする舌がかわいい。トイレにいる時の、真剣な目がかわいい。あくびしたってかわいい。犬といっしょに走り回る姿もかわいい。チビ猫とじゃれ合うのもかわいい。寝姿は、うんとかわいい。足元にすり寄られると、脂下がる自分がいる。

 こんな調子に、首を痛めるほどうなずいてしまう。わかるよわかるよ。

 そんな中住んでいたアパートが火事に遭い、かわいいかわいいブブが行方知れずに・・・。

 

 ブブに対する喪失感を処理できぬまま、偶発的に新たな猫を迎え入れることになる。名前はヌヌ。もとい、「ウンチのついたチビ」からウンチビと不名誉な渾名で呼ばれるようになる。

 ブブをかわいがり過ぎたから、早くいなくなってしまったんじゃないだろうか。そんな懊悩から、かわいがりすぎることに臆病になる著者。とは言っても、パリから東京への引越し、様々なトラブルを乗り越える中で、二人の絆は切っても切れないものになる。

「二度目の猫はトクである 死んだ猫の分まで 大切にされる ということは サバがグーグーを 守っているのだ」 

 ウンチビは強い。ブブが守ってくれているんだから。

 自分が楽になりたいと、安易に安楽死を選ぶ飼い主もいるという。その最後の看護の様子は文字だけでもこんなに辛いのだから、実際目の当たりにしたときのそれはいかほどかと思う。

 でも、猫に「生きたい」という気持ちがある以上、その生をまっとうさせる義務が飼い主にはあるのではと思っている。

 猫はその生涯で、我々にたくさんのことを教えてくれる。まだまだわが猫たちの晩年を想像できはしないが、こうして過ごす今の尊さを噛み締めながら過ごしていきたい。

 

 装丁と、花・料理のプロである著者の描写にも注目です。