【読書感想】猫にかまけて(町田康)

 

 

猫にかまけて (講談社文庫)

猫にかまけて (講談社文庫)

 

 

気位が高く威厳に満ちたココア、犬の血が混じっているのではないかと思うほど人懐っこいゲンゾー、遊び好きで無邪気なヘッケ、並外れて気の強い奈奈−−−−縁あって共に暮らした、ちょっと面白い奴ら。手を焼かされ、言い負かされ、それでもいつも一緒にいた。写真と文章で綴った、猫たちとのいとおしい日々。 

 

 

  1ページ目の1行目。書物にとって最も重要と言っても過言ではない。この本はこうだ。

自分は猫が好きである。

 朗らかにレジへ直行。町田さん、あなたは友だちです。握手。抱擁。

 なぜなら、わたしも猫が好きであるからだ。そして、「猫にかまけて」という魅惑的なタイトル、その表紙の麗しい猫様と目が合ってしまえば、誰だって読まずにはいられまい。

 

 

 このエッセイに出てくる四頭(四人)の猫様方は非常におしゃべりだ。そして、著者と会話をし、面罵し、説教までするらしい。はは、そんなわけあるかい、と尋常な人間なら思うところだが、奇怪な著者のこと、さもありなんとしばし黙考してしまう。

 会話もしかり、文章の中にある抜群のグルーブ感はずるい。おもしろすぎる。

 

 

いま自分方には猫が三匹いる。

と書いて心が苦しくなるのは「三匹いる」という言い方で、自分としてはこれはできうるものであれば、「三人いる」と書きたい。

 猫と一緒に暮らし、彼・彼女らから多くのものを学び、得ている人なら氏のこういう考えに激しく共感するのではなかろうか。(ちなみに町田氏は、虚栄心のため一人二人と言いたいところを一頭二頭と言うことにしているそうだ。)

 

 

 そして、生き物と暮らす人なら、かわいい、楽しい、幸せなことばかりではないというのは周知の事実。避けて通れないのが、別れである。この本の中にも、二頭の猫との別離が描かれている。辛い。辛すぎる。一緒に暮らす猫たちと重ね合わせてしまって、涙なしには読めなかった。

 その喪失に直面したときの町田氏の愚直さ、恥も外聞もないむき出しの優しさたるや。主従関係の一切ない、一対一の関係から生まれるその姿勢に、著者の新たな一面を垣間見た気がした。

 

 あとがきで、氏はこのように述べている。

どうでもいいようなことで悲しんだり怒ったりしているとき、彼女らはいつも洗練されたやりかたで、人生にはもっと重要なことがあることを教えてくれた。

 自他ともに「命」には限りがあること、辛いことも全て受け入れていかねばならぬことを再確認させてくれたこの本には感謝の念を抱いている。

 

 というわけで、このブログではねこが出てくる小説・エッセイ・絵本等々の書評を淡々と書き残していきます。

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